平成25年12月に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて、和食が注目を集めています。
インバウンドで日本にやってくる海外の方も、寿司やラーメンといった和食をお目当てにしている人が多いようです。
スピードラーニング第4巻「文化の違い」にも、「食べる時に音をたてること」で、食の違いに関する話題が出てくるんですよ。
日本人が音をたてて麺を食べるのは何故!?
聞いてよ、あの男の人がおそばを食べてる音!
That’s so rude!
なんて無作法なの!
Dabbieが他のテーブルで音をたてて麺類を食べている人を見て、かなりきつい調子で憤慨しているのですが(汗)
同席している純は、「熱いものを音をたてて食べるのには、理由があるんだよ」と説明します。
「一緒に吸い込んだ空気が、食べ物を冷ましてくれる」というのがその理由なんですが…。
さらにはエスプリラインのスタッフさんの記事でも、温度に絡めてこんなことが書かれていて…。
熱い麺を食べる時に、音をたてて食べるわけはわかったけれど、
じゃあ、ざるそばとか冷たい麺を食べる時はどうなんだろう?もしかすると、冷たい麺を食べる暑い季節だって、
一緒に空気を吸い込めば、さらに冷たく食べられるってこと?!
スピードラーニングでは温度の問題だけになってしまっていますが、音をたてて麺を食べる理由を考えるには、和食の基本を思い出す必要があるんじゃないかなと思うのです。
和食の基本は、「交互に食べる」こと
和食には、ご飯、汁物、漬け物、お菜があります。主食と副食にきちんと分かれていますよね。
でもその食べ方は、海外に比べると大違い。諸外国ではお皿が分かれていると、一皿ずつ食べていくことが多いみたいですが、和食は少しずつ交互に食べるのが基本です。
口の中で別の料理が混ざる、「口中調理」という食べ方です。
学校給食では、一皿ずつ片づけていく「ばっかり食べ」のクセをつけてしまう子どもがいますが、和食で言えば、これはお行儀の悪い食べ方なんですね。
福井大学の研究チームが2007年に地域の小中学生782人を対象に調査をした結果では、4人に1人が「ばっかり食べ」をしているという結果があるので、意外と多くの人がこのばっかり食べをしてしまっているようですが…。
お行儀の問題ばかりでなく、「ばっかり食べ」ばかりしていると、繊細な味覚がなくなるという指摘もあるみたいなので要注意です。
ともあれ、こういう独特な食べ方をするのは、主食のご飯が淡泊な味わいをしているから。
濃いめに味付けした「おかず」や具だくさんの汁物を一緒に食べることで、味を整えながら食べるわけですね。
このことは、つい最近、ラジオ第2で放送されていた文化講演会「和食文化を再考する」で、日本文化史・茶道史を専門にしている能倉功夫さんが指摘されていました。
ユネスコに和食を登録する時にも明記したかったんだけど、申請する用紙には文字数が制限されているので、盛り込むことができなかったんだとか。
でも、そこいちばん大事な根幹ですよね(汗)
麺類も、すすることで味わいを増している… のかもしれない
というわけで、「口中調理」という考え方でいくと、麺類をいただくときに音をたててすするのも、その一つと考えることができます。
ラーメンならスープと絡めながら、そうめんなら麺つゆと絡めながらいただくわけですね。
もちろん、日本でも「音をたてるべきではない」という人もいます。
禅宗の影響を受けた小笠原流のような厳しい礼法では、お蕎麦も音を立てないと言われているのだとか。
でも、所作に関する伝書では、「~するのが好ましい」とか、「~するのが妥当である」といった表現が多く、最後は「ただしいずれも時宜に応じるべし」と書かれていることが多いそうです。
つまり、「ケースバイケース」(時と場合による)なんですね。
この点も日本らしいというか、周りが気持ちよく過ごせるように気配りすることを重視していて、マナーブックのように厳しくお作法として決めているわけではないようです。
ちなみに禅宗のお寺では、沢庵さえも「音をたてて食べてはいけない」とされていますが、うどんは音をたてて食べてもいいんですよ(笑)
というわけで、麺類を食べる時に音をたてていただくのは、おいしくいただくための食習慣というわけで、温度の問題ばかりではないのでは? と思うわけです。
麺類に関する解説には少しびっくりするところがあったりしますが、スピードラーニングは日本の文化を振り返るのにちょっといいきっかけになりますよね。