別記事で英語の綴りがやたらわかりにくいことについて書いたので、この記事ではローマ字のことについて調べてみることにしました。
「あ、い、う、え、お」をローマ字で書くと、「A, I, U, E, O」。小学校で習いますよね。
同じアルファベットで書くんだし、英語がローマ字みたいに読めたらどれだけ楽だろう… と、思ってしまいますけど、そうもいかない事情があるようです。それに困ったことに、ローマ字読みしてると、英語が上達しない原因にもなるようです。
なぜなら、ローマ字が表しているのもは、実は「日本語」だからです。
そもそもローマ字とは、実はいろいろあります
現在、日本で使われているローマ字を調べてみると、大きく分けて3種類もありました。こんな感じです。
・ヘボン式ローマ字
・その他非公式のローマ字
小学校で習うのは「訓令式」と呼ばれるもので、「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」を「tya」「tyu」「tyo」と表記するローマ字です。
ヘボン式の場合は、「cha」「chu」「cho」となります。
その他非公式というのはワープロなどに影響を受けたもので、「Ōsaka」といった長音記号を使わずに「Oosaka」と書いたり、「annpannmann」といった感じで「nn」と重ねた書き方をするローマ字のことです。
非公式は公では使われないので置いといて。「訓令式」と「ヘボン式」ですが、調べてみるとそれぞれ成り立ちがかなり違うものでした。
訓令式ローマ字とは
天文学者の寺尾寿が考案した日本式ローマ字が基になっています。
日本語を日本語らしく書き表すために考えられているのが特徴で、五十音図に対応した構成になっています。
日本の小学校で教えられているローマ字で、国際標準化機構によって採用されています。
ヘボン式ローマ字とは
アメリカ人宣教師ジェームス・ヘボン(James C. Hepburn)が和英辞典を作るために考案したローマ字が基になっています。
英語風に発音すれば日本語の発音が再現できるようになっているのが特徴ですが、日本語を書き表すことはあまり考慮されていないので、専門家から見ると日本語を表記するローマ字としては破たんした部分があるみたいです。
ですが、日本政府がパスポートや多くの国際交流の場で使用するローマ字でもあり、英語の出版物でももっとも広く使われているので、学術論文でも推奨されている形式です。
ローマ字の歴史を簡単に振り返る
日本でローマ字を使い始めたのは海外の人で、日本語を書き表すためだったようです。
その人たちは、16世紀末に来日したイエズス会の宣教師たち。彼らはラテン文字を使ったポルトガル語が公用語だったので、ラテン文字で日本語を書き写したポルトガル式ローマ字を使っていました。
鎖国時代に入ると、長崎の出島に訪れるオランダ人がオランダ式ローマ字を用いるようになり、さらに幕末になると、アメリカ人のヘボンによって英語に準拠したローマ字が作られました。
現在のヘボン式ローマ字は、ヘボンさんが作ったローマ字の一部が修正されたものになります。とはいえ、英語を使う人のために作られたものなので、元々「日本語を書き表すことはあまり考慮されていない」という欠点があります。
このため、1885年には日本人が考案した日本式ローマ字が誕生します。
ところが、ヘボン式と日本式が対立して混乱する場面があったため、1937年になると日本式を基にした訓令式が公式のローマ字として統一されました。
その後、戦後の占領政策ではヘボン式が強制されることがあったりしたようですが、1954年(昭和29年)に改めて訓令式が公式のローマ字として定められています。
だから学校でも訓令式を習うわけですね。
でも、なぜか訓令式は使われる場面がほとんどありません。
道路標識もヘボン式だし、パスポートもヘボン式で表記されています。
学校でも習ってるんだから訓令式を使えばいいのに…。
英語を読む時にローマ字読みを意識してはいけない理由
ともあれ、こんな感じで、「日本語」を「ラテン文字」で書いたものが「ローマ字」ということになります。つまり、ヘボン式で書こうが訓令式で書こうが、アルファベットを使って書いているだけで、それは外国語ではなく日本語なんですね。
表現する文字が「ひらかな」なのか、「カタカナ」なのか、「漢字」なのか、「ラテン文字」なのかといった違いしかありません。
「でも、ヘボン式は英語に準拠しているんだから、外国の人は読めるんじゃないの?」と思ってしまいますが、書いてあるのは日本語で、発音や習慣が全然違う(母音と子音が必ずセットになっている…など)のため、読めないのです。
日本語を知らない外国の人にとってはあり得ない音が並んでいるわけで、「これ、どうやって読むの?」となるみたいですよ。
というわけで、私たちが英語をローマ字読みしてしまう時、無意識に「母音」と「子音」をセットにした日本語として読んでしまいます。でも英語は「母音」と「子音」が必ずセットになるわけではありません。「子音」だけという場合もあります。
ローマ字風に読んでしまうと、「キャット」 (kyatto)
でも、英語は「キャァ~ッ」(kˈæt)
こんな感じで、英語を日本人の感覚でローマ字読みをしてしまうと、そこでもう英語ではなくなってしまうわけです。
この読み方に慣れてしまうと、英語の正しい音がわからなくなってしまうので、英語の聞き取りに影響したり、発音に影響したりして、英語の上達を妨げてしまう原因になってしまうというわけですね。
でも、うっかり読んじゃうんですよね…。気をつけましょう(汗)