善逸と宇髄さんは永遠のライバル? ネズミから見える善逸の姿

ハツカネズミのイメージ

In the dream that Inosuke and Rengoku dream of on the infinite train, Zenitsu with the characteristics of a mouse appears.
無限列車で伊之助と煉獄さんが見る夢には、ネズミの特徴を持った善逸が登場します。

I think this is a great hint for us to know more about Zenitsu.
善逸のことを知るための、大きなヒントになっていると思います。

(この記事は、第3巻、第4巻、第7巻、第9巻のネタバレを含みます)

禰豆子は炭治郎と同じ火之迦具土(ホノカグツチ)と重なるところがありますが、山の神を象徴するウサギのイメージも重なったキャラクターでした。

詳しくは、こちらの記事も覗いてみてくださいね。

では、善逸もウサギでしょうか? 耳がいいし、臆病なところもそれっぽいですよね。ウサギなら禰豆子と一緒でラブラブです(笑)

でも、第7巻 55話に出てくる伊之助の夢の中では、善逸はネズミの「チュウ逸」の姿で現れます。

どうしてネズミなんでしょう?

大国主命の鼠と善逸

ネズミといえば、古事記に出てくる大穴牟遅神(オオナムチノカミ)を助けたネズミが有名です。大穴牟遅神というのは後の大国主命(オオクニヌシノミコト)のことですね。

そう思って大国主命の伝説を読み直すと、様々な場面に善逸の姿が見えてきますよ。

八十神の迫害

大穴牟遅神には兄弟神である八十神(ヤソカミ)たちがいましたが、皆、稲羽(因幡)の八上比売(ヤガミヒメ)との結婚を望んで大穴牟遅神に国を譲り、比売のもとへ向かいます。

大穴牟遅神は荷物持ちとして兄弟神の後に続きます。

でも、八上比売が選んだのは大穴牟遅神でした。この場面で有名なのが、「稲羽(いなば)の素兎(しろうさぎ)」の話です。

鰐(わに)を騙したために仕返しに皮を剥がされてしまった菟(うさぎ)が気多の岬(けたのみさき)で苦しんでいると、通りかかった八十神たちが嘘を言って菟をさらに苦しめます。

後からやってきた大穴牟遅神に正しい対処法を教えられて、菟は傷が癒えるのですが、「八上比売は大穴牟遅神を選ぶだろう」と予言をします。その予言の通り比売は八十神の求婚をすべて断って大穴牟遅神を選ぶのでした。

ところが嫉妬に狂った八十神の迫害が始まり、大穴牟遅神は殺されてしまうのです。

伯岐國之手間山本云、「赤猪在此山。故、和礼[此二字以音]。共追下者、汝待取。若不待取者、必将殺汝」云而、以火焼似猪大石而轉落。尒、追下取時、即於其石所焼著而死。

伯伎の国(ほうきのくに)之(の)手間(てま)の山(やま)の本(もと)に至りて云はく、「赤猪(あかゐ)此(こ)の山に在(あ)り。故(ゆえ)、われ共(とも)に追ひ下(くだ)さば、汝(なれ)待ちて取れ。若(も)し待ち取らずば、必ず将(まさ)に汝(いまし)を殺さむ」と云ひて、火を以(もち)て猪に似たる大石(おおいは)を焼きて転(まろ)ばし落としき。

尒して(しかして)、追ひ下すを取る時に、即(すなは)ち其(そ)の石(いは)に焼き着(つ)かえて死にき。

しかも一度では済みません。二度も殺されてしまうんですよね。

且欺率入山而、切伏大樹、茹矢打立其木、令入其中即、打離其氷目矢而拷殺也。

且欺率入山而、切伏大樹、茹矢打立其木、令入其中即、打離其氷目矢而拷殺也。
また欺きて山に率入(ゐい)りて、大樹(おほき)を切り伏せ、矢を茹(は)めて其の木を打ち立て、其の中に入らしむる即ち、其の氷目矢(ひめや)を打ち離ちて拷(たた)き殺しき也。

このエピソードは、兄弟子にいじめられていた善逸と、どこか重なるところがあります。(第4巻 34話)

根之堅州国への脱出

大穴牟遅神は災難にあうたび母神に見つけ出され、母神の力や母神の願いにこたえた神々によって生命を救われるのですが、このままでは八十神のために滅せられてしまうと、木国の大屋毗古神(おほやびこのかみ)に預けられます。

でも、そこにも八十神が追いかけてくるので、最後は大穴牟遅神の6代前の先祖である須佐男命(スサノオノミコト)を頼って根之堅州国(ねのかたすくに)へ逃げ込みます。

このとき、大穴牟遅神に根之堅州国へ行くようアドバイスをしてくれるのが大屋毗古神です。

自木俣漏逃而云、「可参向湏佐能男命所坐之根堅州國。必其大神議也」。

木の俣(きのまた)より漏(く)き逃(に)がして云はく、「湏佐之男命の坐す根の堅州国(ねのかたすくに)に参(ま)ゐ向(む)かふべし。必ず其の大神(おおかみ)議(は)からむ」といひき。

逃げ込んだ根之堅州国で、須佐男命の娘である須勢理毘売(スセリビメ)と出会い、二人はともに一目惚れ。夫婦になる約束を交わします。

まてまて、八上比売はどうなる? という展開ですが、実はこの他にも、沼河比売(ヌナガワヒメ)、多紀理毘売命(タキリビメノミコト)、神屋楯比売命(カムヤタテヒメノミコト)、活玉依毘売(イクタマヨリヒメ)などなど、大国主命には多数の奥さんがいるのです。

宇髄さんもびっくりの一夫多妻の神様なんですね。

ただ、女の子に弱いところは大国主命と善逸はそっくりなのに、大国主命が善逸と違うのは、「麗はしき壮夫(をとこ)」ということで、イケメンの宇髄さんタイプというところ。

善逸が宇髄さんに反発しまくるのは、こういうところに原因があったりするのでしょうか(汗)

須佐男命が与える試練

須佐男命から与えられる様々な試練を大穴牟遅神は須勢理毘売の協力で次々と乗り越えていきます。

でも、いよいよ窮地に陥ったのが、広い野原に放った鏑矢を拾ってくるよう命じられたときです。周囲に火を放たれたため、逃げ場を失ってしまうのです。

このとき鼠(ねずみ)が現れて、大穴牟遅神の危機を救ってくれるのです。

故、入其野時、即以火廻焼其野。於是、不知所出之間、鼠來云、「内者冨良〃〃[此四字以音。]外湏〃夫〃。[此四字以音。]」如此言故、踏其處者、落隠入之間⑩、火者焼過。

故(かれ)、其(そ)の野に入りし時に、即(すなは)ち火を以て其の野を廻(めぐ)り焼きき。於是(ここにおいて)、出でむ所を知らぬ間に、鼠(ねずみ)来て云ひしく、「内は冨良〃〃(ほらほら)、外とは湏〃夫〃(すぶすぶ)」といひき。

如此(かく)言ふ故に、其の処を踏みしかば、落ちて隠り入る間に、火は焼け過ぎぬ。

地面の中の大きな穴を察知して、自分で入り口を作って入ってくるところは、第9巻 79話の宇髄さんですよね。やっぱり善逸と宇髄さんは大国主命を介したライバルなのかも(笑)

ともあれ、こうした神話がもとになって、大国主命の使いはネズミとされています。

根之堅州国と黄泉国、善逸の無意識領域との共通点

須佐男命が主宰神である根之堅洲国は、諸説ありますが、伊耶那美命(イザナミノミコト)が主宰神を務めている黄泉国と同一と見られる世界です。

伊邪那岐命(イザナギノミコト)が黄泉国を訪れたとき、しばらく待つように言ったまま御殿から出てこない伊邪那美命に痺れを切らし、左の美豆良(みずら)に挿していた爪櫛の歯を一本折り取って、様子を見るために火を灯しています。

つまり、黄泉国の御殿の中は、火を灯さなければならないほど真っ暗なんですね。

第7巻 57話に出てくる善逸の無意識領域も、「体中に墨汁をぬりたくられてるみたい」と表現されるほど、黄泉国を表すように真っ暗でした。

神話ではこの後、居眠りを始めた須佐男命の隙を見て、大穴牟遅神は須勢理毘売命を背負って地上界へ逃げ出します。

この姿は、第7巻 55話末の挿絵に描かれている、禰豆子を背負って幸せの跳躍を見せる善逸の姿と重なります。

大国主命は切羽詰まって大変な場面だけど、善逸は幸せいっぱいでよかったです(笑)

ネズミの能力と特徴

ネズミの聴覚は意外といいようで、100dBの音圧レベルに対して200Hz〜68,000Hz付近までの可聴範囲があり、なかでも20,000〜50,000Hz帯がもっとも聴力がいいという研究報告があります(“ラットの超音波聴力について,”聴覚研究会資料H-84-44(1984))

ウサギの場合は360Hz~42,000Hz程度と考えられていて、人間の場合は20Hz~20,000Hzなので、低音部分は人間ほどではないけれど、ウサギより広い可聴範囲を持っている可能性があるんですね。

性格もドブネズミは獰猛ですが、屋根裏にすむクマネズミは慎重かつ臆病な性格で、倉庫や物置にすむハツカネズミは好奇心旺盛だけど臆病な性格をしていると言われています。

こうしてみると、クマネズミやハツカネズミは、確かに善逸のイメージと重なるんですね。

ちなみに、ネズミにとってよく聞こえるとされる周波数はとても高いだけあって、実際のネズミの鳴き声は「チューチュー」ではなく、「キーッキーッ」とか「キュッ キュッ」といった、金切り声のような高音になるようです。

第3巻 23話に出てくる善逸の叫び声は「汚い高音」と注意書きが入っていたので(笑)、この時点からネズミの特徴が表現されているみたいです。

雷獣のイメージ

そして、ちょっと興味深いのは、ネズミには「雷獣」(らいじゅう)という妖怪もいて、実は雷とも縁のある動物というところ。

雷獣は落雷とともに現れるとされていて、その姿は子犬のようだったり、狸のようだったり、イタチのようだったり、伝えられる地域によってその姿は様々。

ですが、和歌山県日高郡みなべ町に伝わる口承では、「雷はネズミのせいである」とされています。

参考 南部川の民俗─和歌山県日高郡南部川村旧高城・清川村─ 東洋大学民俗研究会

善逸は修業時代、鍛錬から逃亡するために木に登っていたところを雷に打たれるのですが、雷獣とネズミの関係を考えると、これも興味深いエピソードです(第4巻 33話)

以上、善逸の臆病なところと耳のよさは、伊之助の夢に出てくるように、大国主命の使いであるネズミと特徴が重なっていそうだということがわかりました。

では、善逸の強さってどこにあるのでしょう?

調べてみると、善逸の真っ暗な無意識領域は、大国主命のもう一つの顔とも重なっているみたいですよ。長くなるので、善逸の強さに関しては別記事にまとめてみたので、よかったら覗いてみてくださいね。

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