善逸の羽織は鱗模様です。魚や龍の鱗の意味があります。
善逸の羽織は、黄色地に白の三角の鱗模様です。
三角を組み合わせたデザインで、善逸の場合は地の部分がグラデーションしていて、ところどころ白い三角も入ってけっこうオシャレなデザインです。
蛇や龍、魚の鱗をパターン化したもので、もちろん家紋にも「鱗紋」というものがありますよ。
雷の呼吸の使い手が繋ぐ模様
炭治郎は家族で同じ模様を着ていましたが、善逸の羽織は師範の桑島滋悟郎と色違いのもの。家族で着ていた炭治郎と違って、師範と弟子の間で受け継いでいく模様になるようです。
ただ、壱の型だけできる善逸と、壱の型だけができない兄弟子と、二人で雷の呼吸の後継者として受け継いでいくことが期待されていたということなので、兄弟子が同じ模様を着ていないのは変なのですが…
第4巻を見る限りでは、兄弟子は鱗模様をどこにも着ていないようです。4巻以降で、鱗模様を着ているシーンが出てくるのかな?(ただ今、4巻まで読書中)
ともあれ、三角の模様も古墳時代にまで遡る古いデザインで、祭文として、守護、鎮魂、豊穣、辟邪の意味が込められていたと考えられています。
ただ、能や歌舞伎では鬼女や蛇の衣装に使われる柄なので、模様としては少々いわくのある模様といえます。
【追記】
兄弟子 獪岳(かいがく)も持っているはずの同柄の着物の件、17巻の空白ページに解説がありましたね。ちゃんと渡されていたのかぁ。切ない設定ですね。
鱗が表すもの
三角は魚の鱗を表しますが、水神の象徴として蛇や龍を表すこともあります。
龍は首から腕の付け根、腕の付け根から腰、腰からしっぽまでの長さがそれぞれ等しいことから、天上、海中、地底の三界に通じているとされる想像上の生き物です。
古代中国では、普段は蛇のような姿をしていて水中に潜んでいますが、時が至ると龍の姿に変じて天に昇り、雲を起こして雨を降らせ、時に雷を連れてくるとされています。
最初は伊之助から「弱味噌」と呼ばれていても、一つの技を極めて成長していく善逸にぴったりのデザインといえそうです。
歴史に見る黄色
黄色は少し複雑な事情を持つ色で、古代中国では「黄」が「皇」の発音と同じであること、五龍神の考え方では黄色は中央に位置することなどから、徳の高い色として皇帝のみが使うことが許された色でした。上の図のように、日本でも方位や時刻を表す時に使われていた考え方です。
ただ、西洋では裏切り者のユダが黄色の服を着ていたとされることから忌み嫌われる時代があり、現代中国ではこうした西洋文化の影響なのか、なぜか色情や猥褻なことを意味する色にもなっているそう。
西洋の裏切り者の色は、黄色といっても明るいきれいな黄色ではなく、くすんだような黄色だったみたいですけどね。
それにしても、善逸よ… 羽織の色からして女好き設定だったのか。絶妙な采配ですね(汗)
五行と日本書紀に見る黄色
そして、古代中国の五行思想では、黄色は「土」を表します。
善逸は雷の呼吸の使い手ですが、実は雷と土は日本神話では関係が深く、土雷(ツチイカヅチ)という名前の神様がいます。
この神様、黄泉国で伊邪那美命(イザナミノミコト)の体から生まれた八雷神のうちの一で、伊邪那美命の右手から生まれた神様です。
伊邪那美命の変わり果てた姿を見て逃げ帰る伊耶那岐命(イザナギノミコト)の後を、他の八雷神や千五百の軍勢と共に追うのですが、死者が住む黄泉国と、生きるものが住む、葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)の境にある、黄泉比良坂(よもつひらさか)に生えている桃の実をぶつけられて退散していくのです。
あれ? 4巻で善逸も兄弟子から桃の実をぶつけられてましたね…(汗)
そして、三角の部分に使われている「白」は、五行では「金」を表します。
黄色が表す「土」は「金」を生じ、白色が表す「金」は「水」を生じる要素。炭治郎の「水」を表す黒につながっていく色です。
ただ、炭治郎の緑の「木性」は、善逸の黄色の「土性」とは相剋(そうこく)、善逸の白の「金性」は、炭治郎の緑の「木性」とは相剋と、それぞれ相手を抑えてしまう関係にあります。
炭治郎と善逸は、鼓屋敷、那田蜘蛛山、無限列車と同じ戦いの場へ赴きますが、いつもある程度離れた場所で戦っているんですよね。こういうのも、何か関係があったりするのかも… なんて考えると、ちょっと楽しいですね。
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