禰豆子ウサギと炭治郎、ルーツは正しい道を教える「見返り兎」かも

平等院周辺

The image of Prince Ujinowakiiratsuko can be superimposed on Tanjirou Kamado.
炭治郎には菟道稚郎子皇子のイメージを重ねることができます。

There isa a legend that the prince was saved by a rabbit when he lost his way. Nezuko has the image of a rabbit.
皇子は道に迷った時、ウサギに助けられた伝説があります。禰豆子はウサギのイメージがあります。

(この記事は、第8巻、第12巻、第15巻、第23巻のネタバレを含みます)
 

前の記事では、宇治橋に伝わる橋姫伝説は、どこか禰豆子のイメージに重なるところがありました。

千寿郎くんの名前の考察記事でまとめたように、平将門のイメージが重なる平等院とその周辺は、鬼滅の刃に関連するものが隠れていそうです。

この記事では、平等院のお向かいにある「宇治上神社」(うじがみじんじゃ)と「宇治神社」(うじじんじゃ)、そしてすぐ隣りにある「朝日山」に注目してまとめてみます。

宇治神社と宇治上神社

宇治上神社と宇治神社は、もとは二社一体で「宇治離宮明神」と呼ばれる一つの神社でした。明治になってから近代社格制度に従って、「宇治上神社」と「宇治神社」に分けられています。

古くから菟道稚郎子命を祀っているとされ、後に平等院の鎮守社になりました。

宇治上神社の建物は、建材の年輪年代測定法によって確認されていて、本殿は康平3年(1060年)ごろ、拝殿は健保3年(1215年)ごろに造営されたことがわかっています。

年代的に平等院が開かれたのと同時期に宇治離宮も整備されたと見られるようで、科学的に見ても平等院と関わりが深いみたいですね。

現在の御祭神は、応神天皇(おうじんてんのう)と、その二皇子である菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)と、仁徳天皇(にんとくてんのう)の三座の神様です。

宇治神社の本殿は年輪測定はされていないみたいで正確な年代は不明ですが、鎌倉時代初期の造営と見られるようです。

こちらの御祭神は菟道稚郎子の一座で、宇治神社の本殿には菟道稚郎子像とされる神像(非公開、秘蔵)が祀られています。

正しき道を教えてくれる見返りウサギ

宇治上神社、そして宇治神社に祀られている菟道稚郎子命は、応神天皇の皇子です。「源氏物語」に登場する宇治八宮(うじはちのみや)のモデルとも言われている人物です。

「日本書紀」によると、応神天皇の子どもたちは「合わせて二十王」もいたそうですが、応神天皇は幼少の頃から聡明だった第6皇子の菟道稚郎子皇子を特に気に入られていたようで、百済から渡来した阿直岐(あちき)や王仁博士(わにはかせ)といった学者を師とし、多くの典籍を学ばせていました。

「日本書紀」によると、応神天皇40年1月に菟道稚郎子皇子を立てて皇太子とし、第4皇子の大鷦鷯尊(おおさざきのみこと、のちの仁徳天皇)を太子の補佐役として国事を治めさせ、第1皇子の大山守命(おおやまもりのみこと)に山川林野を司らせたといいます。

翌年、応神天皇が崩じましたが、儒教の思想を守る菟道稚郎子皇子は「兄弟の上下、聖人、愚人の順位があり、古今の典常(てんじょう、人が守るべき不変の道)がある」として即位を固辞、大鷦鷯尊に皇位を譲り、宇治の離宮「桐原日桁宮」(きりはらひげたりのみや)に移り住んだと伝えられています。

宇治神社の社殿によると、当時、都のあった河内国より菟道稚郎子皇子が宇治へ向かう途中、道に迷っていると、一羽の兎が現れて、一行を振り返りながら先導をして正しい道へ導いてくれたという伝説があり、「見返り菟」は神社の神使にもなっています。

 
平等院と巨椋池
出典 国土交通省ウェブサイト「宇治川の歴史 / 豊臣秀吉と宇治川 / 水管理・国土保全 | 国土交通省」の秀吉による改修前の宇治川と巨椋池を加工して作成
 

今でこそ桂川、宇治川、木津川はすっきりした姿をしていますが、これは豊臣秀吉をはじめ、長い年月をかけて何度も改修工事を重ねてきたためで、それ以前は上の図のような感じの景観だったみたいです。

上の図は、国土交通省に秀吉の改修前の河川の様子が紹介されていたので、平等院、宇治神社、宇治上神社、宇治橋、そして秀吉が造った槇島堤の大体の位置を重ねてみました。

巨椋池(おぐらいけ)の北側に毛細血管のように広がる部分は池に浮かぶ島々なので、池の全体像はかなり大きなものになります。

淀川を遡ってこんな所に出てきたら、確かにこれは迷いそうですね(汗)

でも、ウサギといえば、伊之助が無限列車で見る夢の中で、禰豆子はウサギの姿で描かれていました。

現実でも「頭をなでろ」と頭をぐいぐい寄せてくる様子は、まるでウサギです。

菟道稚郎子皇子を導くウサギを禰豆子と見ると、道に迷う菟道稚郎子皇子の姿は、炭治郎の姿にも見えてきます。

正しき道を求める炭治郎とツツジの花

ツツジの花

 

…あの時、俺がもっと強かったら。一瞬で…煉獄さんを助けられるくらい強くなれる方法があったら…。

ずっと考えていました。だけど、そんな都合のいい方法はない。近道なんてなかった。

足掻くしかない、今の自分ができる精一杯で前に進む、どんなに苦しくても、悔しくても。
そして俺は、杏寿郎さんのような強い柱に、必ずなります。(第8巻 69話)

 

煉獄さんの最後の言葉を伝えるために煉獄家を訪れた炭治郎は、千寿郎君の前で力強くこう宣言します。そして、その言葉の通りに、伊之助や善逸たちと鍛錬に打ち込む様子が描かれます。

アニメでは描かれませんでしたが、そのそばには満開のツツジが咲いています。(第8巻 70話)

ツツジを漢字で書くと「躑躅」。

「角川 漢和中辞典」によると、それぞれの漢字にはこんな意味があります。

 

躑【形声文字】(テキ/たちもとおる)
1. たちもとおる(たちもとほ・る)。たたずむ。行きなやむ。
2. あしぶみする。
3. つつじ。
躅【形声文字】(チョク)
1. あしずりする。あがく。行きなやむ。あしぶみする。たちもとおる。たたずむ。
2. あと。あしあと。古人の行ったあと。

 

原作でツツジが描かれているのは1コマだけですが、千寿郎くんに力強く宣言した後も、鍛錬の中でまだまだ行き悩んだり、迷ったり、足踏みするような状態があったことを表しているのかもしれませんね。

でも、そんな迷いの中で重ねていった努力は、遊郭編で最初の成果を上げるわけです。

ツツジは半日陰~日当りのよい場所に咲く花で、かつては藤の花とともに、山の神を迎える「天道花」にも使われる花でした。

虫がつかず、過酷な環境に耐え、やせている土地にも根付き、近年では空気清浄効果に注目されて道路脇にも多く植えられています。

ツツジが咲くのは4月中旬~5月中旬。煉獄さんの誕生日が5月10日(ファンブック第一弾 50頁)であることを考えると、煉獄さんの通り過ぎていった足跡を、藻掻きながら続いて行く炭治郎たちを見守る花と取ることができそうですね。

アニメでは消えてしまいましたが。

この後も炭治郎は、無惨を倒すこと、鬼になった妹を助けることを目標に(第12巻 103話)、ひたむきに努力を続ける姿が描かれます。

そして、第15巻 126話では、どちらを選ぶか決断しなければならない場面に向き合うことになりますが、決断することができずに迷う炭治郎を禰豆子が助けるところは(第15巻 126話)、やはり正しき道へ導く見返りウサギですよね。

宇治はこの世から来世へ続く祈りの空間

それから、平等院と宇治神社・宇治上神社の間には、興味深い関係がありました。

建材の測定によって、宇治上神社の本殿は康平3年(1060年)ごろに整備されていることがわかっています。これは平等院が寺院へ改修された、永承7年(1052年)とほぼ同じ時期です。

このことから、平等院と離宮社(現・宇治神社、宇治上神社)は、宇治川とその周辺も含めてワンセットでデザインされていると指摘する研究者の方がいます。

 
参考 宇治市歴史的風致維持向上計画 第2章「宇治市の維持向上すべき歴史的風致」 | 宇治市
 

つまり、宇治川を挟んで東岸にこの世の守り神である離宮社があり、西岸の対になる位置に来世を託す平等院を設けることで、浄土教の説く此岸から彼岸への連続性を生み出して、宇治の自然と重なりながら祈りの空間をつくっているというんですね。

現代の感覚ではちょっとイメージしにくいですが、平等院周辺から、木津川、桂川の合流地点にかけて広がる巨椋池は蓮の名所でもあったので、季節になると辺り一面、どちらを向いても蓮の花という壮観な景色が楽しめたようです。

平等院周辺の地域丸ごとが、まさに浄土の世界だったわけですね。

 
蓮の花のイメージ
 

鬼滅の刃も、この世(過去、大正時代)と来世(現代)が連続して、ストーリーが完結していきました。

現代編では戦闘もなく、物語の新たな展開もないまま終わったので(第23巻 204話、205話)、ストーリーの急展開もあって雑誌連載では賛否あったようですが、この物語の構成は宇治の祈りの空間とも重なっていそうです。

単行本では加筆があるので、この世から来世への連続性は、雑誌連載時に比べるとかなりスムーズに読めるようになってるみたいですね。

ちなみに巨椋池は昭和の干拓でなくなってしまいましたが、巨椋池由来の蓮は宇治市植物公園で育てられているので、季節になれば水鉢栽培の蓮の花を現在でも見ることができるみたいですよ。

 
参考 巨椋池の蓮 和辻哲郎 | 青空文庫
参考 希少な”巨椋池” 由来のハスが、宇治市植物公園で見頃に | LIVING kyoto
参考 宇治市植物公園
 

炭治郎に絡む、菟道稚郎子皇子の埋葬地候補

菟道稚郎子皇子と大鷦鷯尊の皇位の譲り合いは3年も続くのですが、大鷦鷯尊の決意が固く変えられないことを悟った菟道稚郎子皇子の自害という形で決着します。

宇治神社の御由緒によると、皇子の死後、仁徳天皇が皇子の住居跡に祠を建て、その神霊を祀ったのが離宮社の始まりとされています。

宮内庁は京阪三室戸駅そばにある「宇治墓」(京都府宇治市菟道丸山)を菟道稚郎子皇子の墓と治定して管理していますが、でもはっきりと「ここが菟道稚郎子皇子のお墓だ」と確定できる場所は、まだ見つかっていないようです。

「日本書紀」には「菟道の山の上に葬られた」とあることから、三室戸山や朝日山を皇子の墓と考える人もいて、平等院のちょうどお向かいにある朝日山は、早くから菟道稚郎子皇子のお墓ではないかと見られていました。

朝日山の山頂には、「五畿内志」(ごきないし)を編纂した儒学者、並河五一郎(江戸時代中期)による菟道稚郎子皇子の墓碑が建てられています。

この朝日山には「朝日山観音堂」と「朝日山恵心院」があって、平等院と対になるような興味深い関係があります。

太陽のイメージを持つ朝日山観音堂

「朝日」という名称から見ても、朝日山は「鬼滅の刃」にぴったりですよね。その名のとおり、宇治から見て最初に朝日が当たる位置にあり、かつてはこの山だけでなく周囲の山々も総称して朝日山と呼ばれていたと考えられるようです。

気象条件がよければ、朝日山の頂上にかかる夜明けの太陽が鳳凰堂を照らし、池の水面に当たった光が反射して、お堂の中の本尊の尊顔を下から照らす瞬間があるのだそう。

朝日山観音堂は朝日山の山頂にあり、観世音菩薩が祀られています。

観世音菩薩は観自在菩薩とも漢訳される仏様で、観音菩薩とも呼ばれています。

「観世音」「観自在」という名前には、「人々が救いを求めるのを聞くとすぐに救う、自在に真理を見通して救う」という意味があり、救う相手に合わせて33の姿に変わることができると言われています。

神仏習合の考え方では「天照大神」の本地仏と考えられている仏様です。

 

本地仏(ほんじぶつ)
本地垂迹(ほんじすいじゃく)という、仏や菩薩が衆生を仏道で救うため、借りに日本の神々の姿となって現れるという考え方に出てくる言葉です。
本地仏は、姿を借りる前の本来の仏や菩薩のことをいいます。

 

お向かいの平等院の本尊は、「阿弥陀如来坐像」です。神仏習合の考えでは「月読命」の本地仏と考えられている仏様です。

太陽と月を表現する仏様が、向かい合わせになっているんですね。

月のイメージもある朝日山恵心院

そんな朝日山ですが、「月と季節の暦」さんのように、月の名所として紹介するサイトもあります。

 
参考 第七話 朝日の山から月の山へ(京都府宇治市・朝日山) | 月と季節の暦 ─月の名所十二選 余話─
 

その根拠の一つとなっているのが朝日山の山裾にある「恵心院」(えしんいん)です。

山号は平等院と同じ「朝日山」。観光地ではありませんが、花の寺とも呼ばれ、一年をとおして季節の花が楽しめるお寺です。本殿の拝観はできませんが、入場は無料で境内を散策することができるようです。

本尊は観音菩薩の変化身の一つである十一面観音。神仏習合の考えでは、「天照大神」の本地仏と考えられている仏様です。

このお寺はこの他に、鎌倉時代の「阿弥陀如来立像」もあります。神仏習合の考えでは「月読命」の本地仏と考えられている仏様です。

「太陽と月を表す仏様が祀られているお寺」があるところは、日の呼吸を継承しながら、愈史郎も認める素質があったという炭治郎にぴったりです(第23巻 204話)

炭治郎と重なる、菟道稚郎子皇子のご先祖様

ちなみに、宇治稚郎子皇子のお母さんである宮主宅媛(みやぬしやかひめ)は、宇治の木幡(現・宇治市木幡)に居を構えていた和珥臣(わにおみ)の祖である日触使主(ひふれのおみ)の娘と伝えられています。

「日に触れる」という文字もすごいですが、和珥臣の「珥」も、興味深いですよ。「角川 漢和中辞典」を調べると、「耳飾り」の意味があるようです。

 

珥(ジ/みみだま)
1. みみだま。みみかざり。耳に飾る珠玉。耳璫(じとう)
2. つば。刀のつば。
3. ひがさ。太陽の周りの雲気
4. みみきる。刑罰として耳をきる。

 

そして、稚郎子皇子のお母さんは和珥氏の出身。

炭治郎の生みの親はワニ先生。

なんか、妙にぴったりくるんですけど、この辺は関係あるのでしょうか(汗)

この他にも、宇治には鬼滅の刃のことを知るための鍵が隠れていそうですよ。こちらの記事も覗いてみてくださいね。

 

 

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