堕姫とミツアナグマで解き明かす零余子の秘密

三種の神器

It seems that the image of the three sacred treasures may be reflected in “Demon Slayer”.
「鬼滅の刃」には三種の神器のイメージが織り込まれている可能性がありそうです。

The honey badger that Inosuke was said to be the same as this may be one of the hints.
伊之助がこれと同じだと言われていたミツアナグマも、そのヒントの一つかもしれません。

(この記事は、「鬼滅の刃」2巻、3巻、7巻、9巻、11巻、12巻、19巻、「コード・ブレイカー」1巻、2巻、4巻、5巻、7巻、8巻、15巻、ファンブック第一弾のネタバレを含みます)
 

別記事にまとめたように、「源氏物語」や「枕草子」が指し示すキーワード「一条天皇」は、八咫鏡(やたのかがみ)につながる鍵と考えることができそうです。

そして刀鍛冶の里編では、八岐大蛇の尾から現れたと伝わる草薙剣(くさなぎのつるぎ)さながらに、絡繰人形の中から古い刀が出てきます。

後は八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)が揃えば、三種の神器ですよね。

そう思ってよく見ると、遊郭編から刀鍛冶の里にかけて、勾玉に関わるイメージが織り込まれているみたいですよ。

そのヒントとなる漫画が、「CODE:BREAKER」(コード・ブレイカー)(上条明峰)です。

コード・ブレイカーから見えるもの

「ジョジョの奇妙な冒険」と同じように、「コード・ブレイカー」も「鬼滅の刃」と似ているところがあります。

主人公の桜小路桜は、儚げで可憐な外見に似合わず、「合気道三段、空手・柔道四段、握力51kg。一日3合、米を食べ、『月刊格闘技』を愛読して感動のナミダを流す武士道女」で、「昔の武士みたいなカタイしゃべり方」をするのが特徴です。(1巻 code:01)

煉獄さんや甘露寺さんを思わせるキャラクターですよね。しかも匂いに対する嗅覚が異常なほど正確という、炭治郎のような特技もあります。(7巻 code:52)

登場する人物も、「鬼滅の刃」に絡むキーワードがいくつも出てきます。主なところで、こんな感じ。

 

【コード・ブレイカー】 【鬼滅の刃】
桜小路桜 富士山・富士山本宮浅間大社に祀られる「木花咲耶姫命」(コノハナサクヤヒメノミコト)
大神零(おおがみれい) 菅原道真を神格化した名称「菅原大神」(スガワラノオオカミ)
神田先生 平将門を祀る「神田明神」
藤原姉弟 「師輔」から「道長」につながる藤原北家
平家先輩 「平将門」を討った平貞盛(たいらのさだもり)の四男・維衡(これひら)は、伊勢平氏の祖。伊勢平氏は「平清盛」につながっていきます。

 

そして「コード・ブレイカー」では、「稀血」(まれけつ)という特殊な血液型が登場します(2巻 code:09)。「鬼滅の刃」でも、珍しき系統の血の持ち主である「稀血」(まれち)が出てきますよね。読みは違いますが、同じ漢字です。(3巻 第21話、第24話、19巻 第167話、第168話)

この他にも、「コード・ブレイカー」では境界を守るガーディアン「ゐの壱」というカラクリ人形が登場します(8巻 code:65)。「鬼滅の刃」では、刀鍛冶の里に「縁壱零式」という戦闘用の絡繰人形がありました(12巻 第103話)

しかも4巻 code:24に登場する人見先輩の履くスニーカーは、炭治郎の羽織と同じ市松模様なのです。

コード・ブレイカーが示す星のまじない

興味深いのは、大神が追う「捜シ者」の右の手の甲には、花のような形をした入れ墨が描かれていて(5巻 code:39)、堕姫の帯の模様にちょっと似ているところです。

下図右が「捜シ者」の右手の甲の模様。左が堕姫の帯の模様です。

 
探しものと堕姫の模様
 

この模様のことを、捜シ者は「星のまじない」と呼ぶのです(15巻 code:124)。

もしかすると、堕姫の帯の模様も、星を指すヒントなのかもしれません。

しのぶ様が教えてくれた、ミツアナグマが示すもの

そう考えると、「伊之助はミツアナグマと同じ」という、しのぶ様のヒントも、星を示している可能性が出てきます。(12巻 第100話)

ミツアナグマはイタチ科の哺乳類で、英語ではhoney badger(蜜穴熊)とかratel(ラーテル)と呼ばれています。”honey” の名前のとおり、ハチミツが大好きです。

住んでいる場所は、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸や南アジア。

身体には黒い毛が生えているのですが、頭の後ろから背中、尻尾の先まで灰色の毛が生えていて、この部分の皮は分厚くて硬く、その頑丈さはライオンの牙も通さないほど。そのうえ伸縮性があるので、背後から捕まえられても、体をねじって反撃することができるといいます。

体中の関節を外して、頭しか通れない穴でも平気で進んでいく伊之助のような柔軟性ですよね。(9巻 第78話)

 
参考 超タフ ラーテル | BIOME
 

毒が効かないミツアナグマとマングースの関係

きよちゃんによると、ミツアナグマは「毒が効かないから毒ヘビであっても食べちゃう」とのこと。(12巻 第100話)

ヘビの毒が恐ろしいのは、ヘビ毒の成分「α-ブンガロトキシン」が筋肉にある受容体に結合して塞いでしまうため。神経伝達物質の「アセチルコリン」が結合できなくなるので、体中の筋肉が弛緩して麻痺してしまうのです。

ミツアナグマは、筋肉の受容体に「α-ブンガロトキシン」が結合するのを阻害することで、抵抗性を獲得したと考えられています。

 
参考 超タフ ラーテル | BIOME
 

同じようにヘビ毒に対する抵抗性を持つとされる動物に、マングースがいます。

実はこのマングース、インド神話では毘沙門天の神使とされる動物なのです。

日本では、毘沙門天の神使は虎と百足。無限列車では、鉱山の坑道(百足穴)によく似た伊之助の無意識層が描かれていました。(7巻 第57話)

 
百足穴のイメージ
 

伊之助には他にも百足のイメージと重なるところがあって、毘沙門天につながるキャラクターといえます。

興味深いのは、毒蛇のなかでもコブラの場合、古くから信仰の対象だったところです。「日本人の死生観 蛇信仰の視座から」によると、ジェイムス・ヘイスティングス編「宗教倫理学大百科事典」には以下のように紹介されているそうです。

 

エジプトではコブラは「火」「日輪」のシンボルで、(中略)蛇は太陽神・豊穣神・土地神であると同時に、星のシンボルでもあった。

 

つまり、「ミツアナグマ」と「マングース」は、どちらも毒ヘビのコブラにかかわる動物で、神話ではコブラは太陽神であると同時に星のシンボルでもあるというわけです。

図にすると、こんな感じになりそうです。

 
伊之助とミツアナグマの関係
 

参考 「日本人の死生観 蛇信仰の視座から」 吉野裕子著
 

日、月、星が示すもの

三種の神器の鏡と剣、そして星が重要な鍵になるとすると、後醍醐天皇(第96代)の側近・北畠親房(きたばたけ ちかふさ)は、「神皇正統記」(南北朝時代)で興味深いことを記しています。

 

三種の神器世に伝ふること、日月星(ひつきほし)の天(あめ)にあるにおなじ。鏡は日の体(たい)なり、玉は月の精なり、剣は星の気なり、ふかき習(なら)ひあるべきにや
三種の神器が現世に伝わることは、太陽、月、星が天上にあるのに同じ。鏡は太陽の姿であり、勾玉は月の精霊であり、剣は星の精気である。これにはふかい由緒があるのであろう。
精霊
万物の根源をなすとされる、目に見えない霊(たま)のこと
精気
万物を生育させるというはたらきのこと

 

「神皇正統記」では、日は「八咫鏡」、月は「八尺瓊勾玉」、星は「草薙剣」としていますが、「鬼滅の刃」の場合はどうでしょう?

手掛かりは、射楯兵主神社で60年ごとに催されるお祭り「三ツ山大祭」にありそうです。

無限列車のイメージが重なる三ツ山大祭が示すもの

三ツ山大祭
 

「三ツ山大祭」が催される「60年」は、干支の組み合わせが一巡りして、再び最初の組み合わせに戻ってくる年数です。

これは鬼殺隊の階級が、順位を表す音読みではなく、月日や循環を意味する訓読みになっているところがヒントになっていそうです。(2巻 第8話)

そして、三ツ山大祭で設けられる造り山の一つ「小袖山」は、造り山を被う小袖は列車の乗客に、そこに巻きつく大百足は大勢の人を運ぶ無限列車に重なるイメージがあります

 
小袖山
 

このお祭りが催される射楯兵主神社は、姫路にある神社です。この土地は古くから播磨陰陽師が活躍していました。道摩法師こと蘆屋道満も、播磨国出身の陰陽法師です。

ブログ「播磨陰陽道」さんによると、播磨陰陽道として大切に伝承されているものに、祭祀、武術、霊術があり、三種の神器になぞらえているそうです。こんな感じ。

 

鏡 … 祭祀
剣 … 武術
玉 … 霊術

 

参考 播磨陰陽道とは 播磨陰陽道・播磨陰陽師 | 播磨陰陽道
 

そう考えると、お祭りで設けられる造り山は3つあるので、三種の神器に重なってきそうです。

モチーフになっている人物や伝説から、こんなふうに考えることができそうです。

五色山に重なる「鏡」のイメージ

五色山

陰陽五行の理を表す五色の幕で飾られた五色山 … 【鏡】
人物 … 大江山鬼退治の源頼光

 

五色山を飾る源頼光は、父・満仲の代から九条流藤原氏と深いつながりを持ち、皇太子時代の三条天皇に仕えていた人物。

頼光が従った兼家、道長、頼通の主君は一条天皇 です。道長と対立した藤原顕光には妓夫太郎のイメージがありました。

一条天皇の時代は内裏焼亡が3度も発生し、形代の神鏡にも被害が発生しています

また、源頼光から数えて五代目の人物である源頼政は、後白河天皇の第三皇子・以仁王とともに平家追討に立った人物です。

以仁王の挙兵は失敗して頼政も自刃してしまいますが、この争乱は源頼朝の挙兵につながり、後の壇ノ浦の戦いで平家は滅亡。安徳天皇(第81代)と草薙剣の形代、そして八尺瓊勾玉は海中に没してしまいます。(八尺瓊勾玉は後に回収)

「平家物語」によると、八咫鏡は大納言佐殿(清盛の五男・重衡の北の方)が神鏡の入った唐櫃を持って入水しようとするところを、源氏の兵たちに取り押さえられて回収されます。

このとき、唐櫃の錠がねじ切られて箱が開けられそうになるのですが、兵たちの目がくらみ、鼻血が流れるという神鏡の神威の影響と、生け捕りにされていた平時忠の忠告によって、元通り縛って納め直されたといいます。

能登半島の伝説では、平時忠は義経の妻となった蕨姫の父親という話があり、蕨姫も神鏡を指すキーワードになっていそうです。

 
参考 「平家物語」巻十一 能登殿最期
参考 揚げ浜の歴史 源義経 | 揚げ浜 室町時代からの伝統を再現
参考 時忠「能登平家物語」 | 御菓子司 吉野屋
 

二色山に重なる「剣」のイメージ

二色山

富士を表す二色の幕で飾られた二色山 …【剣】
人物 … 鎌倉武士・仁田忠常の猪退治

 

二色山を飾る仁田忠常(にったただつね)は、頼朝(初代将軍)、頼家(2代将軍)に仕えた、鎌倉幕府古参の武将です。

この鎌倉幕府を北条高時(14代執権)の代で倒したのが、後醍醐天皇(第96代)です。皇統が南朝と北朝に分かれたとき、三種の神器を守った人物です。

後醍醐天皇の第一皇子・護良親王(もりよししんのう/もりながしんのう)は、倒幕に功を挙げたものの足利尊氏と対立。足利直義(あしかがただよし)に捕らえられ、最後は鎌倉の牢で殺害されてしまうのですが、「太平記」(室町時代)によると、「太刀で喉元を刺そうとすると、親王は首を縮めて剣先を咥え、歯で噛み折った」と伝えられています。

宇髄さんの日輪刀に噛みついて止めた、妓夫太郎の姿に重なります。(11巻 第91話)

親王の寵姫は北畠親房の娘・雛鶴姫といって、京極屋に潜入していた宇髄さんの奥さんの名前と同じです。(9巻 第71話)

建武の新政が失敗し、足利尊氏と対立した後醍醐天皇は、吉野で京都奪還を目指すのですが叶わず、法華経の五の巻を左の御手に握り、御剣に右の御手を掛けて、8月16日丑の刻に崩御されたと「太平記」(室町時代)に記されていて、剣のイメージの強い天皇といえそうです。

後醍醐天皇の開いた南朝があった吉野は奈良のほぼ中央に位置し、その北は宇佐八幡の神託で揺れた平城京があった場所です。伊之助には和気清麻呂(わけのきよまろ)や称徳天皇(しょうとくてんのう)(第48代)のイメージがあったので繋がりを感じさせますよね。

そして吉野の南は、山岳地帯を通って熊野へと通じています。熊野は、次にまとめる小袖山へつながっていきそうですよ。

ちなみに俳句の世界では、三日月の異称に「月の剣」(つきのつるぎ)という秋の季節を表す言葉があります。

刀鍛冶の里の晩ご飯は「松茸ご飯」(秋)(12巻 第101話)で、夜空には三日月が描かれていました(12巻 第105話)。ここにも剣のイメージが織り込まれていそうですね。

小袖山に重なる「星」のイメージ

小袖山

境界の神をイメージさせる小袖で飾られた小袖山 … 【星】
人物 … 百足退治の藤原秀郷

 

小袖山を飾る藤原秀郷は、平将門を討伐したことで有名です。藤原房前(北家)の五男・魚名の流れの人物で、きょうだいが平国香(たいらのくにか)の妻となっているので、将門を共に討った平貞盛は甥っ子になります。

平貞盛の四男・維衡(これひら)は藤原道長に仕え、「十訓抄」(鎌倉時代)に、源頼信、藤原保昌(ふじわらのやすまさ)、平致頼(たいらのむねより)とともに、「世に勝れたる四人の武士」と讃えられた人物。伊勢平氏の祖で、6代目に太郎坊焼亡と関わる平清盛がいます。

ちょっと興味深いのは、清盛は「平家物語」(鎌倉時代)では白川院の御落胤とされているところ。

清盛の母は白川院の寵姫だった祇園女御(ぎおんのにょうご)といい、思慮深い忠盛に感服した院から下賜されたのですが、このとき祇園女御はお腹に院の子を宿していて、これが清盛だというんですね。

 
参考 「平家物語」 巻六 祇園女御
 

「鬼滅の刃」では「やんごとなき人々」のイメージがいくつも織り込まれているようですが、「平家物語」では伊勢平氏の棟梁・清盛も、やんごとなき人々の一人なのです。

清盛が生まれた後、熊野へ御幸する途中、休息を取る院に奏上する機会を得た忠盛は、藪にたくさん生えていた零余子を袖に入れて、かしこまってこんな歌を詠んだといいます。

 

いもが子は這う程にこそなりにけれ
芋の子は蔓が這うとすぐになっております/妹(妻)の子は這う年頃になっております

 

下弦の肆の名前は「零余子」でしたよね(ファンブック第一弾 90頁)。忠盛が白川院に奏上する場面に重なりそうです。

そしてこのとき、白河院が向かっていた熊野権現は、星と勾玉につながっているのです。

長くなるので、熊野権現に関しては別記事にまとめていきますね。

 

 

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